科学者の芽 育成プログラム2008-2019
主催:埼玉大学 大学院理工学研究科 後援:埼玉県教育委員会/さいたま市教育委員会
ジャーナル一覧
今年度の優秀レポートを掲載します。
ジャーナル
2013年01月31日(木曜日)

今年度は皆さんから優秀なレポートをたくさん提出していただきました。その中からいくつかご紹介します。

●6月10日[ステップ1]土曜ジュニアセミナー・地学「地球の中の水について」 
『ちきゅうの中の水』 伊藤愛菜
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[ステップ1・2]土曜ジュニアセミナー・サイエンスカフェ「水の化学」 
『水の化学』 村上典花
『水の化学』 伊藤愛実
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[ステップ2]土曜ジュニアセミナー・数学「代数の世界」

『代数の世界』を受講して  相馬 言成
 数学…と聞くと、それだけで難しく感じ、あんまり面白いイメージを持たない人の方が多いだろう。僕もその一人だった。しかし、今回の講義のテーマである「代数」はちょっと興味を惹かれる内容だった。日頃何とも思わず使っていた数学記号には歴史があって、国によっても様々な特色があることを知った。そして、様々な研究者たちがその時代ごとに解法を導き出していることだ。内容は難しく理解できないこともたくさんあったが、いかに研究者たちが解き明かそうとしたか、そのプロセスは実に興味深かった。
 まず驚いたのは、現在使われている算用数字(123456789…といった数)の起源が古代インドのバラモン数字であること。六世紀頃、西アラビアと東アラビアで作られた数字の字体のうち、西アラビアの字体が改良されたものが算用数字になったらしい。東アラビアの字体は現在もエジプトや中近東で使われているというのも歴史を感じさせられた。
 そして、今現在、計算する上で欠かせない数々の公式は、その時代の研究者たちが試行錯誤を重ね、作られたものだということ。例えば、xやyといった文字記号は、1637年にデカルトが使った記号が改良されて使われているが、その以前にも多くの試行錯誤が繰り返されていて、初めの頃の記号は、今では考えられないような形をしていたという。
 興味深いのはそれだけではない。方程式論だ。ちょうど今、中学2年生の僕は2次方程式を学ぶところなので、その歴史を知ることができたのはとてもラッキーだと思った。2次方程式の解法の歴史はBC1700年頃のバビロニアに始まり、かなりたって、1515年にフェッロ教授が3次方程式の一つ目の型の解法を発見し、タルターリアがもう一つの型の解法を発見。これを一般的な解法として証明したのがカルダ―ノで、さらに、その弟子のフェラーリが4次方程式を解いたとか。5次方程式の解法も試行錯誤されたものの、1826年アーベルによって解けないことが証明された。また、1832年にフランスのガロアは方程式が解けるかどうかを解明するガロア理論を残した。これらのことから、数学に対する僕の考え方が変わった。僕はこれまで、数学は何かを研究し導き出すための利用手段の一つにすぎないと思っていた。「数学」そのものが、試行錯誤を重ね、研究された努力の成果であるということを強く感じた。
 講義の中で、過去に生み出された研究の成果が今の数学や、様々な分野に応用されていると感じたところもあった。例えば「ユーグリッドの互除法」である。この原理は割り算を繰り返すことによって、最大公約数を求められるというものだ。これは普通の計算だけでなく、図形等にも応用されている。自分の生み出したものが応用される。さらにそれを応用する。時代を超え、知識を共有し、進化させる。そんな素晴らしさが数学にあることを知ることができた。
 今回の講義を受けて、数学に対する考え方が変わった。僕は今まで、与えられた問題を教えてもらった方法や公式に当てはめて解くのが数学であって、それ以上でもそれ以下でもないと思っていた。どうしてこの公式ができたのか、公式の原点を追求したいなどと考えたこともなかった。時々、他に解き方はないかと自己流に解法を考えてみたことはあったけれど、そういったことをもっともっとやってみることの必要性というか、面白さに今回改めて気づくことができた。もしかしたら、誰も発見していない解法を生み出せるかもしれない。数学の中にはまだまだ解明されていない未知の領域があるはずだ。
 僕はまだ中学2年生だから、知らない公式もたくさんある。数学検定を受けるために、中3や高1の範囲の勉強を独学でしていると、難しすぎて行き詰ってしまう。だから、最近、好きだった数学が苦手になりつつあった。他に解法はないかと追及していたころの数学に対する楽しさを忘れてしまっていた。解けないとつまらなくなってしまう。苦手意識があるとどんどんやらなくなる。だから、数学が嫌いという人も多くいる。悪循環だ。僕は苦手にならない教え方はないかと考えたこともあった。そんなことを考えていた自分を思い出した。
 もっともっと勉強して、数学の世界を広げていきたい。そして、新しい数学を生み出してみたい。そんな気持ちになることができた。

—–講師からのコメント—–
レポートを書いてくれて有り難う.数学を一層好きになってもらえたようで,私も大変嬉しく思います.これからも,面白いと思ったことを積極的に勉強すると良いと思います.
次の本に,話の前半部分が解説されています.機会があったら読んでみて下さい.
酒井文雄:「大学数学の基礎」(共立出版),2011

埼玉大学理学部数学科
酒井文雄
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●7月28日[ステップ1]一日大学生・化学「果物の香りの成分を調べる」 
『くだもののかおり』 伊藤愛菜
『グレープフルーツのオイルをとりだしてみた』 高地駿輔
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●8月2日[ステップ2・3]夏休み集中講座・物理「ビックバン宇宙と宇宙線の謎」 
『ビックバン宇宙と宇宙線の謎』 村上典花
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●9月1日[ステップ2]土曜ジュニアセミナー・化学「元素の世界」 
『元素の世界』 伊藤愛実
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●9月17日[ステッフ1・2]最新科学とその現場を知る1日・サイエンスカフェ

『機器は科学を進める協力者-分析機器の話-』の講義に参加して  相馬 言成
 今回のサイエンスカフェはこの後に行われる施設見学のために、色々なものを色々な方法で認識することなど、様々な物質や認識、調査方法などについて聞くことができた。それらをまとめたいと思う。まず科学機器が必要な理由についてだが、僕ら自身、ある程度の物質の比較ができる場所はある。それが、僕らの身体で物質の特徴つまり刺激を受け取る部分、いわゆる感覚器官と呼ばれるものである。学校でも習った目、つまり視覚耳の聴覚、鼻の嗅覚、舌、口による味覚、皮膚による触角の五つの感覚神経と脳による第六感の六つを言う。これらの感覚神経および感覚器官で受け取る情報は、目⇒電磁波(光)耳⇒空気の波、圧力変化(音)鼻⇒気体の科学物質等(におい)舌、口⇒個体または液体の物質(味、食感)脳⇒電気信号(思考)となっている。簡単にいうと、人間そのものが物質を見極める機器であるとも言えるわけだ。しかし、化学薬品をなめたり、食べたり、直接においを嗅いだら危険だし、視覚、聴覚にも限度がある。そのために科学機器が必要になってくるのだ。
 では、今、科学機器、そして科学技術はどのくらい進歩しているのだろうか?次は最新の科学技術について一番面白かったものを紹介していこう。
 まず、光を使った技術だ。われわれの目でとらえることができるのは、たくさんの光の中で、可視光と言われるものぐらいしか見えない。実際はたくさんの種類の光があるのである。それは、光が波であり、粒…粒子であること、そして、光の全てがそれぞれ波長が違うためである。また、光はエネルギーというものを運んでいて、光を発するところから光が当たるところへ伝える。それは、波長と反比例のようだ。波長が長ければ長いほど、伝達されるエネルギーが少ない、そのため地球からみると光の源のエネルギーがわかる、ということなのだろう。この光を最大限に利用した技術が、天体望遠鏡や、顕微鏡。さらに宇宙から来た光?(放射線)を観測することで、宇宙の起源を明らかにする計画もあるようだ。ちなみに、その波長はnmレベル、これは原子と粒子の間くらいの大きさらしい。
 他にも元素について、周期表などを使って学んだり、宇宙で水素、炭素、窒素といった気体、鉄やマグネシウムといった星をつくっている金属などがトップ10にはいっていたことを知ったり、地球を構成する元素と宇宙を構成する元素が全然違うこと等もおそわった。宇宙放射線というものについても、光とも関係あるのだがガンマ線、中性子、ベータ線、陽子、アルファ線、光子といった種類があるらしい。
 今まで見てきたものは、実験器具機器を使い調べ、考え、発見した研究のたまものである。研究者は様々な器具を使い、研究しているのだ。
 今回見てきたものもすべてそう。科学者は必要な機器や器具を探すところから既に研究なのである。実験もそう。方法を考えるのもそう。何よりも、疑問を持つことだ。僕もそんな本格的な研究がしたい。

—–講師からのコメント—–
たいへんよいレポートです。この文章の内容はサイエンスカフェで話したかったことのすべてといっていいです。全体の要点を的確につかんでいるところがすばらしい。科学者・研究者・技術者には,このように全体について大きく把握(つかみとること)する力と,個々の部分を詳細に調べる力とが必要になるのです。ぜひ,それらを磨いて科学者への道を進んでください。

埼玉大学理学部基礎化学科  
永澤 明
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●11月10日[ステッフ2]土曜ジュニアセミナー・数学「3枚の長方形を組み合わせて見える立体」

『3枚の長方形を組み合わせて見える立体』の講義に参加して  相馬 言成
 今回の講義では、今までの数学の意識を変える斬新な講義であった。
 僕は数学と言うと、公式があったり、計算したりといった難しくて複雑なものだと思っていたのだが今回のテーマは、図形と数学を利用した、頭を柔軟にして考える必要ある、言わば計算パズルであったのだ。
 それが、「三枚の平面を組見合わせて見える立体」についてである。今回は別名、「畳んで遊べる立体パズル」である。この形式のパズルについて、埼玉大学のこの講義でもらった資料に書いてあったインターネットサイト「遊びにせんとや」と、ちょうどこのパズルが載っている「数学文化 第六号」のふたつを利用しまとめてみた。
 なお、講義では、作ってできた形や、組み立てに関する複雑さや完成した立体の面白さの事についてを主に話していたが、今回僕はその三枚の平面を使ったパズルの構造といった組み立て前の段階に重点を置いて調査、まとめをしていきたいと思う。

 さて、まずこの三枚の平面を使った立体の作り方について、紹介したい。
『 図A  図B  図C』 
 まずは、長方形を用意。それに図AのようにL字形のきりこみをいれる。具体的には長方形の長い辺を縦にして見た時ちょうど縦の半分ぐらいの所から切り始め、横の半分の地点で上に直角にのばし同じ距離切る。(この組み合わせるためのきりこみをスリットというらしいのだが、今回講義では、スリットがあらかじめ作られている物を用意してあった)三枚を順番に切れ目に入れ込んで完成だ。実に簡単な原理である。でもやはり不器用の場合には少しばかり苦戦はするのであろう。
 また今回は、長方形三枚の他に正方形三枚、正三角形や正六角形を四枚でもやった。正方形のスリットは基本的に長方形と似ていて正三角形と正六角形のスリットは図B、図Cのように似ている。要するに四枚と三枚では組み立てるための条件が違うというわけだ。
 その条件だが、まず、四枚の時、組み立てやすさを考えると、基本的には対角線の線上の線分、あるいは頂点と中心を結ぶ線上の線分を三本持っていることである。
 もちろん変わった形のパズルがあってもおかしくはないし、実際ある事はある。それでも基本的には正三角形か、正六角形である。もちろんこの二つに、上に述べた線は三本ある。
 後もう一つは、スリットの形だ。正三角形の場合も、正6角形の場合も長方形とは違い三本の対角線を利用した矢印型のスリットである。おそらく、そうでないと組めないかだろう。四枚の場合は、4-1=3本、3枚の場合は3-1=2本というわけなのだろう。数が少ないので微妙だが法則性がありそうな数である。いつか5、6枚を使ったこのパズルを探して調べてみたい。
 さて、ここである疑問が浮かんでくる。それは、「なぜ正三角形や正六角形、四枚で立体を作る時Y型のスリットにしないのか」とか、「なぜ、正方形のスリットをダイヤの様な向きに置いて、正方形の辺が正八面体の稜になるよう(スケルトンモデル)に作らないのか」などというものである。僕自身も不思議に思った。なぜなら、その方が美しい形になるように思うからだ。
 しかし、それこそがこのパズルの難しい所。実はこれらの形はスリットを作ることができないからである。例えばY字型のスリットだが、線と線の角が120°で綺麗だが、全ての線の長さを等しくしようとすると、三つに分かれてしまったり、もしくは外周につながらなくなってしまうのだ。
 スケルトンモデルも同様である。切り離さないように、なおかつより美しく。それを追求しようとすると、数学の知識はかなり養われることだろう。
 また、長谷川治さんのホームページ「遊びをせんとや」に、星型の平面を組み合わせて立体を作った物なども載っているなど、徐々にバリエーションも増えてきている。また、このパズルは大半が組みたてた状態のまま少し上から力を加えると平らに畳める。まさしく、「畳んで遊べる立体パズル」であるわけだ。魅力的なパズルである。
 自分でも、スリットの線を変化させた場合どうなるのか試してみたい。たとえば、正方形の場合に、スリットの線と線の角度を45度に変えることができそうな感じがする。ただ、効率がもんだいになるかもしれないが、・・・。

 今の時代、公式等を使った数学はいやでもたくさん習うであろう。しかし、このような楽しく学べ、なおかつ数学力をかなりつけられるこういったものには今のままではあまり触れあわないことだろう。学力向上のためにもこういったものが学校の授業に取り入れられていってほしいものだ。

—–講師からのコメント—–
よく調べて非常におもしろく考えていますね。さらに考えを進めると大きな発見につながるかもしれませんよ。
本文34~37行目は、もう少し考えてみましょう。長方形(正方形)でY字形にスリットを入れたとき、美しくおさまるでしょうか?自分で正方形を書いて見てみましょう。

経済学部 名誉教授
岡部恒治

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●12月1日[ステップ2]土曜ジュニアセミナー・物理「光を操る:レーザー光が作り出す科学」 
『レーザー光を使っていろいろな実験をしてみよう!』 伊藤愛実
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●12月26日[ステッフ2・3]冬休み集中講座・数学「ガンの免疫応答の数理」

『ガンの免疫応答の数理』の講義に参加して  相馬 言成
 今回の講義は、『数学』と『医学』両方を利用した、科学について学んだ。それが、 ブラウン運動などを使った『ガン』の対処法についてである。
 まず、ブラウン運動について説明したい。ブラウン運動のブラウンとは、発見者のロバート ブラウンの名前からきているそうだ。ロバートブラウンはスコットランド生まれのイギリスの植物学者。1773年12月21日生まれ1858年6月10日に死去した。彼はエディンバラで医学を学び、軍医としてアイルランドで服務。1798年にロンドンを訪れて、ロイヤルソサエティ会長のJバンクスの知遇を得る。彼の進めで、1801年から1805年にオーストラリア探検隊に参加し、4000種の植物を採取、本を書き…。少し変わっていて、役に立つ事を、どんどん研究していった人である。花粉が実験で一番好きな物!という言葉がふさわしい研究者で、花粉の受精を顕微鏡を観察、水の上に花粉を浮かべて、観察していた所、花粉の中から微粒子が出現、微粒子が不規則に動く(振動運動を行う)のを発見した。これが、ブラウン運動である。
 このブラウン運動は、しばらくの間、液体の様な溶媒中に浮遊する微粒子が、不規則に運動する現象とは知られてはいたが、原因は不明だったのだが、量子力学、相対性理論を発見した、アルベルト・アインシュタインが熱力学、統計力学によって、ブラウン運動が熱運動する溶媒の分子の不規則な衝突によって引き起こされる現象であると、理論的に証明されたらしい。
 さらに、ロバート ウィナーというアメリカ人数学者によって、ブラウン運動は数理モデル化されたのである。これは、ウィナー過程ともいわれるそうだ。
ブラウン運動そのものについては、少し専門的すぎて理解が追いつかなかったのだが、酔っ払いの動き(乱歩・酔歩)別名ランダムウォークの極限という事、工学、カオス理論とも切っても切れない関わりがある事、今では物理学にも応用がきくこと、負けるたびに掛け金を二倍にする賭け方を意味するギャンブル用語からきている、公平な賭けのモデル、マルチンゲール理論とも関係があるという事は講義で何とか理解する事ができた。
 さて今度はガンについてだが、ガンは正常な細胞が形質転換でがん細胞になる所から始まるようだ。一応、免疫細胞により、ガン細胞を攻撃、破壊しているようなのだが、上手く包囲網からすり抜けた物が、大きな塊になるまで成長、(自己組織化)発癌するのである。ちなみに、アミノ酸の配置が少し変わるだけでも発癌するのだそうだ。
 そこで、ブラウン運動の数学モデルを利用する。最初にガンの転換および増殖の時の免疫応答にスポットを当てた確率モデル作れば、カオス…つまり隠れた定性的性質を発見したり、特異な性質に対してモデル論的な説明を加えたり、ブラウン運動と分岐性を組み合わせた物を利用することで、たくさんの事ができるのである。他にも、確実に治るか分からない、前立腺がんと完治直前で退院を繰り返す、共存治療という新しい技術の欠点の、「人による退院のメド」の問題を、少しの検査と、数学により、モデルを作ることで新たな治療法を作った人もいるのである。
 様々な分野と手を組み、協力することで、新たな医療法がどんどん見えてきている今の社会。いつか、ガンが恐くない病気になるのも遠くないだろう。

—–講師からのコメント—–
レポートを提出して頂き、ありがとうございます。とても意欲的に取り組んでおられる様子がうかがえます。講義自体は短時間に沢山のことを盛り込んだ内容でしたが、それにもかかわらず非常に多くのことをかなり正確に把握しておられ、驚きました。1つの事柄でも予想もつかないような非常に多くのことと関連があり、裏でいろいろとつながっていたりするものです。将来何か目標を決めてそれに向かって進まれるとき、広い視野を保ちつつ、1つの事柄に集中して取り組む姿勢を忘れずに努力していただければと思います。今後もいろいろなことに関心を広げながら勉強を続けていってください。貴兄の更なる発展・活躍を期待しています。

教育学部 数学教育講座
道工勇

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